ケアマネ
寄り添えるケアマネジャーへ
ケアマネジャー/相談支援専門員
喜多あや
Kita Aya
ケアマネ

それは5年ほど前のことでした。 子どものいない早坂さん夫婦は二人暮らしで、最初は奥様の認知症のケアを担当していましたが、ご主人も介護が必要な状態となり、私が彼らの担当となりました。

ご主人は要支援で、まだ週3日半日働いており、自動車も運転することができました。しかし、奥様の認知症の進行に伴い、ご主人も介護に専念することになりました。
ご主人は気性が荒く、曲がったことが大嫌いでした。初対面の人に対しても心を開かず、時間に正確でないと、細かいことについて指摘し、怒鳴り散らすこともありました。

奥様に対しても厳しく接し、介護をしてくれる職員や福祉用具のモニタリングをしている職員にも多くの指摘をし、怒鳴り散らすことがありました。

ケアマネ

私の勤務地は早坂さんのご自宅からとても遠く 初回の訪問で約束の時間に遅れてしまい、顔を真っ赤にして「社会人なのに遅れるな、お前なんか帰れ」と言われました。心の中では「道が混んでいたのに」と思いましたが、ただただ謝罪しました。
2回目以降は遅刻しないように、道が混んでいても時間に余裕を持って待ち、早めに到着するように心掛けました。月に1回の訪問でも、月に3回も訪問するようにし、なんとかご主人の心を開いてほしかったのです。
一方、早坂さんのご主人は奥様の認知症が進行するにつれて、本来は優しくしたかったのにイライラをぶつけ、奥様の介護をしながらだんだんと寂しそうな表情を浮かべるようになりました。その様子を見ていると、私は胸が締め付けられる思いがしました。

ケアマネ
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私は少しずつ信頼を築き上げていきました。 ある時、早坂さん夫婦を昔よく行かれた大丸にタクシーで連れて行くことにしました。私は奥様の車いすを押し、夫婦が大丸のデパートを並んで歩く姿を見て、よく言い合っていた夫婦だったのに、その日は昔を取り戻すかのように笑顔で過ごしていました。
ご主人は次第に私がお酒が好きだということを知り、訪問するたびにビールのおつまみなどをお土産にくださり、私に対して家族のように優しく接してくださるようになりました。
今では、サービスのプランも私に安心して任せてくれるようになりました。人の性格は変えることはできませんが、少しずつ信頼を積み重ねることで、現実を変えることができるのだということを私は知りました。
私は今後どんな利用者さんに出会っても、表面だけに出ているものだけで判断するのではなく、その人の内面を理解し、寄り添えるケアマネジャーを日々目指しています。